くりちゃんの闘病記③最後まで「いつも通り」を大切にした日々 ~旅立ちの日まで~
- 2 日前
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更新日:6 時間前

🌻 あの夏を思い出してほしくて
5月に入ると、くりちゃんの食はさらに細くなってきました。
何か食べてくれるものはないかなと気になっていたある日、スーパーで店頭に並び始めたスイカが目に留まりました。
「そうだ、スイカなら食べてくれるかもしれない。」
そう思って買って帰ると、くりちゃんはとても美味しそうに食べてくれました。
小さく刻むと果汁がたっぷり出るので、飲み込みやすかったのだと思います。
少し早い季節でしたが、どうしても食べさせてあげたかったのです。
夏になると、朝食にはスイカを食べるのが我が家の習慣でした。
くりちゃんもスイカが大好きで、毎日とても美味しそうに食べていました。
そして夏は、くりちゃんにとって一年でいちばん楽しい季節でした。
毎日のように夫と散歩へ出かける公園では、バッタやコオロギを見つけると、一目散に走って追いかけ、小さな体で器用に捕まえては、美味しそうに食べていました。
夢中になって虫を追いかける姿は本当に生き生きとしていて、見ている私たちまで笑顔になりました。
その姿を見ていた公園の子どもたちも、
「くりちゃん、どうぞ」
と虫を捕まえて持ってきてくれることがありました。
「かわいいね。」
「賢いね。」
そんな声をたくさんかけていただき、くりちゃんは本当にみんなに愛されていました。
毎日食べていたスイカの味から、あの楽しかった夏の日々を思い出してくれたら──。
そんな願いを込めて、少し早い季節でしたがスイカを買ってあげたのでした。
庭に出しても、ほとんど歩くことができなくなりましたが、それでも少し土を掘ってみたり、レタスをついばんでみたりと、穏やかな時間を過ごしました。
ミカンの葉っぱに、孵化したばかりの小さなアゲハ蝶の幼虫を見つけると、くりちゃんをミカンの木のそばまで連れて行き、指で示すと嬉しそうに食べてくれました。
「くりちゃんが虫を食べてくれると、本当に助かるよ。ありがとうね。くりちゃんがいなくなっちゃったら困るなぁ。」
そんな言葉が、思わず口をついて出ました。
庭仕事のパートナーとして虫を食べてもらえたら──。
そんな思いで迎えたくりちゃんは、その役目を本当によく果たしてくれました。


🐛 大好きな虫を、もう一度
くりちゃんが大好きだったコガネムシの幼虫を、少しでも食べさせてあげたい。
そう思って庭中を掘り返してみましたが、なかなか見つけることができませんでした。
室内へ戻ると、体を温めるために遠赤外線サウナを低温モードにしてくりちゃんを入れて、向かい合って数時間を過ごしました。
その間、スイカと、OS-1を少量混ぜた水と、ゆで卵の黄身をお湯で薄く溶いたスープを交互に飲ませながら、一緒に穏やかな時間を過ごしました。
保温箱へ戻ると、いつもは立って窓から庭を眺めていたくりちゃんも、足の力が弱くなり、座っている時間が増えてきました。

🌸 いつも通りの日常を贈りたい
自力で立てなくなっても、できるだけ、いつもと変わらない毎日を過ごさせてあげたい。
そして、お別れが近いことを感じながらも、「できなくなったこと」ではなく、「まだできること」に目を向けて過ごそうと思いました。
好きなことをして、虹の橋を渡るときには、楽しい思い出をたくさん持って行ってほしい。
そんな思いで、一日一日を大切に過ごしていました。
また、くりちゃんには、何度もこんな言葉をかけていました。
「今度は鶏に生まれてきちゃだめだよ。もし、また鶏に生まれてくることがあっても、あなたを大切にしてくれる優しい人のところへ行くんだよ。」
春の花が美しく咲き、新緑がまぶしい季節。
庭だけでなく、よく一緒に歩いた公園にも連れて行ってあげようと思いました。
藤のバスケットに毛布とペットシーツを敷き、くりちゃんをそっと座らせて、夫と一緒に散歩へ出かけました。
歩いていた頃と同じ目線になるようにバスケットを下げ、ゆっくり歩いていくと、くりちゃんは首を伸ばし、草むらをじっと見つめながら、一生懸命虫を探しているようでした。
歩くことはできなくなっても、目に映る景色や風の匂い、草の香り、そして虫を探す楽しさは、きっと変わらなかったのだと思います。
動物は、本能に沿った行動をするとき、本当に生き生きとした表情を見せてくれます。
くりちゃんが「楽しい」「幸せ」と感じる時間を、私たちは十分につくってあげられただろうか。
そんなことを考えながら、夫とゆっくり歩きました。

🐔 ひとりっ子だったくりちゃんへ
群れで暮らす鶏なのに、くりちゃんは一羽で過ごす時間が多くありました。
もちろん、庭では私と過ごし、夫と公園へ散歩に行ったり、時にはドライブに出かけたり、一人っ子だからこその楽しい時間もたくさんありました。
それでも、寂しかったり、不安だったりすることもあったのではないか。
そんな思いが、旅立ちを前にした今になって何度も胸をよぎりました。
これまで何度も夫に
「もう一羽迎えない?」と話しました。
そのたび、
「でも、2羽は大変だよ」
と言われては、確かに…と思いながらも、諦められず
迎えるなら、黒い羽に白い斑点が美しい岡崎おうはんがいいなぁ、と思っていました。
けれど、何度探しても、一羽だけ譲ってくださるところを見つけることはできませんでした。

💛 最後まで大好きだったもの
旅立ちの三日前、とうとうくりちゃんは自力で立ち上がることができなくなりました。
それでも、口元まで運ぶとスイカは食べてくれました。
ある日、思い立ってベランダのプランターの土を掘り返してみると、そこには丸々と太ったコガネムシの幼虫が何匹もいました。
庭ではなかなか見つからなかったのに、不思議なくらい、たくさんいました。
くりちゃんの前へ持っていくと、幼虫を見るなり素早く口を伸ばし、二匹食べることができました。
それ以上は食べられませんでしたが、その姿がとても嬉しかったのを覚えています。
翌日も見せてみましたが、一度つついただけで、もう食べることはできませんでした。
けれど、旅立つ前日、もう一度幼虫を見せると、大きな幼虫を一匹だけ食べてくれました。
本当に食べたかったのか。
それとも、私を喜ばせようとしてくれたのか。
その答えはわかりません。
でも、もう食べられないと思っていたくりちゃんが最後に見せてくれたその姿は、今でも忘れられません。
丸々とふくよかだった体は、いつの間にか小さく痩せ細っていました。
🌈 旅立ちの日
その夜は、ずっと一緒に過ごしました。
ひとりで旅立たせたくなかったからです。
翌朝。
朝の柔らかな陽ざしが差し込む窓辺へくりちゃんを連れて行き、優しく体をマッサージしていました。
そのときでした。
くりちゃんの体が、一瞬、小さく震えました。
「あ……今、体から出たな。」
そう感じました。
「くりちゃん、逝ったみたい。」
夫に声をかけると、すぐに駆け寄ってきてくれました。
2026年5月7日。
夫の誕生日を命日に。
くりちゃんは、眠るように、とても穏やかで優しい表情のまま旅立っていきました。


🎁 くりちゃんが残してくれた最後の贈り物
くりちゃんは、最後まで私たちにたくさんの幸せを届けてくれました。
けれど、本当の「最後の贈り物」は、その旅立ちの日に待っていました。
長い間探し続けても見つからなかった、一つのご縁。
それは、まるでくりちゃんが「大丈夫だよ」と導いてくれたような、不思議な出来事でした。
そのお話は、次の記事で綴りたいと思います。



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