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🐾 香りの世界を旅する-犬の人間の嗅覚、そして隠れたリスク

嗅覚の王者、ブラッドハウンド ― 犬の中でも特に優れた鼻を持つ
嗅覚の王者、ブラッドハウンド ― 犬の中でも特に優れた鼻を持つ

私たち人間が「匂い」に気づくとき、その背後にはどれほどの世界が広がっているのでしょうか。


ジャッキー・ヒギンズ著『人間には12の感覚がある ― 動物たちに学ぶセンス・オブ・ワンダー』には、犬の嗅覚の驚くべき力について、思わず息をのむようなエピソードが描かれています。


🌿 犬の嗅覚は人間の10万倍

フロリダ州立大学感覚研究所のジェームズ・ウォーカー博士は、人間と犬の嗅覚を比べる研究を行いました。熟したバナナのような香りを持つ「酢酸アミル」という物質を使った実験で、犬はなんと 1兆分の1(ppt) という極微量を嗅ぎ分けたのです。


オリンピック用プールに1滴落とした程度の匂いを察知できるというから驚きです。一方、人間は犬の1万倍から10万倍の量がなければ気づけません。


これが「犬は人間の10万倍鼻が利く」と言われるゆえんです。


🏔️ 災害救助から法医学まで

その嗅覚は、単なる“鼻の良さ”では終わりません。

  • 流れの激しい川底に沈んだ遺体を発見する

  • 厚さ7.2メートルの雪の下に埋まった人を救助する

  • 爆発で粉々になった車の破片から特定の人物の匂いを嗅ぎ分ける


こうした“人間では不可能な探知”を、犬はやってのけているのです。


👑 ブラッドハウンド、嗅覚界の王者

とりわけ ブラッドハウンド は、犬種の中でも群を抜いて鼻が利くことで知られています。その歴史は古く、紀元前7世紀のアッシリア王宮の石板にもその姿が刻まれているほど。


🐶伝説のブラッドハウンド、ニック・カーター

なかでも伝説的な存在とされるのが、1900年にケンタッキーで生まれたブラッドハウンド、ニック・カーター。探偵小説の主人公にちなみ名づけられた彼は、ハンドラーのヴォルニー・G・マリキン大尉とともに500人を超える犯人を追い詰め、刑務所送りにしました。

  • 1年間で126人を逮捕

  • 有罪判決率は驚異の78%

  • 事件発生から105時間後の現場でも追跡して自白に導いた記録


これらは“嗅覚の探偵”と呼ぶにふさわしい偉業です。


👂 耳としわが嗅覚を助ける

ブラッドハウンドの垂れ下がった耳は、匂い分子を鼻へ集めるのに役立っています。皮膚のしわやたるみは匂いを逃さず捉える役割を果たし、強いあごの力も確かに武器ですが、ブラッドハウンドの真の強みは何といっても、その鼻――嗅覚です。


人間は、大きく優れた脳で匂いを嗅いでいる
人間は、大きく優れた脳で匂いを嗅いでいる

🌸 人間の嗅覚も潜在力は高い

一方で「人間は嗅覚の鈍い動物」と思われがちですが、それは神話にすぎません。


スウェーデン・リンショーピング大学の感覚生理学者 マタイアス・ラスカ の研究によれば、人間の嗅覚は多くの哺乳類よりも敏感で、猿やラッコ、オオコウモリよりも優れていることが分かっています。


さらに、犬との比較で試された15種類の匂い物質のうち、5種類では人間が犬を上回った のです。それらは植物由来の匂いであり、人間の進化や生活環境に根ざした“強み”が示されています。


🐾 人間の嗅覚を呼び覚ます

2007年、カリフォルニア大学バークレー校の実験では、視覚・聴覚を遮断し、被験者たちにエッセンシャルオイルの匂いの道を四つん這いでたどらせました。


すると、人間も驚くほど正確に匂いを追跡でき、練習を重ねるごとに犬のような動き(匂いのありかをよく確かめるべく、行きつ戻りつするなど)を自然とするようになったのです。


ここからわかるのは――


🔹 人間は「大きく優れた脳」を使って匂いを識別する能力を持っている

🔹 ただし日常でそれを活かしていないだけ


つまり、人間も嗅覚を鍛えれば、まだまだ潜在力を引き出せるということです。


🧠 脳で補う人間の嗅覚

人間の鼻はハードウェア的には犬に劣ります。

  • 嗅上皮の表面積が小さい

  • レセプターの種類が少ない

  • においを嗅ぐ効率も犬に比べて低い


しかし、人間の脳内で 嗅覚に関わる部位の範囲は広く、多くの部位が働いている ため、匂いの識別には脳の認知能力をフル活用しています。

言い換えれば、人間は 大きく優れた脳で匂いを嗅いでいる ともいえます。貧弱な鼻の能力を、脳の多彩な機能で補っているのです。


🔬 最新科学が示す人間の嗅覚の力

近年の研究では、人間の嗅覚は従来考えられていたよりも 敏感で、多様な匂いを嗅ぎ分けられる能力がある ことがわかってきました。

犬のように匂いの強度で勝負するのではなく、 脳の認知力で匂いを分析する のが人間の強みです。



✨ センス・オブ・ワンダーを思い出す

犬が風を嗅ぎ、地面を調べ、目を細めるとき――その背後には、私たちには見えない“情報の大河”が流れています。

しかし、人間もまた、嗅覚という窓を通して世界をより豊かに感じ取る力を持っています。

視覚障碍者であるヘレン・ケラーは、匂いを嗅ぐだけで男性と女性、乳児と大人を区別し、個人ごとの匂いも認識していました。愛する人の匂いは決して間違えず、何年も会わなくても再会した途端にわかるほどです。

科学的には、視覚障碍者全般の嗅覚が特別に優れているとは証明されていませんが、個人差や経験によって特定の能力が高まることはあるのです。


犬とともに暮らすとき、私たちはその感覚世界の一端を垣間見ています。そしてそれは、自分自身の中に眠る“センス・オブ・ワンダー”を呼び覚ますきっかけになるかもしれません。


🌸 人間と匂いの記憶 ― プルースト効果

私たちには「匂いと記憶」が強く結びつくという、他の感覚にはない特別な特徴があります。

フランスの作家マルセル・プルーストは、小説『失われた時を求めて』で、マドレーヌを紅茶に浸した香りから、幼少期の思い出が鮮やかによみがえる体験を描きました。この現象は「プルースト効果」と呼ばれ、科学的にも証明されています。


👃 匂いは、脳の「嗅球」から感情や記憶を司る大脳辺縁系にダイレクトにつながっています。だから、ある香りを嗅ぐと、懐かしい風景や人の声、当時の気持ちまでも一瞬で呼び起こされるのです。


🍊 匂いとともによみがえる瞬間

・夏の夕暮れ、蚊取り線香の匂いで思い出す子どもの頃の縁側

・柑橘の香りに重なる、祖母がむいてくれたみかんの温もり

・シャンプーの匂いでよみがえる、初恋の人の面影


嗅覚は「忘れていたはずの記憶」を扉のように開く力を持っています。それは犬のような“鋭さ”とは違う、人間だけの感覚世界といえるでしょう。


✨ 犬と人間の共鳴

犬が「匂いの情報の大河」を読み取っているとすれば、人間は「匂いを通じて過去と現在をつなぐ旅人」。

犬の嗅覚に驚嘆すると同時に、私たち自身の「匂いの記憶の力」にも耳を澄ませてみると、日常の香りが宝物のように感じられてくるのではないでしょうか。


🚫 犬にとって危険な「人工的な香り」

~🐕 犬と暮らす人への注意:香りは使い方次第で毒にもなる~

人間の生活ではリフレッシュやリラクゼーションに使われる芳香剤やアロマ。しかし、犬にとっては香りが健康被害やストレスの原因になることがあります。


🌐 海外の獣医師・団体からの注意喚起


「ティーツリーオイル、ペパーミント、シナモン、シトラス、ユーカリ、ウィンターグリーン、ペニーロイヤル、ヤランヤランなどは、嘔吐・震え・呼吸困難・意識障害を引き起こす可能性があります」

「植物由来だからといって安全ではない。精油が化学火傷や呼吸器への影響を及ぼすことがある」

避けるべき精油の例:シナモン、クローブ、ペパーミント、ペニーロイヤル、ティーツリー、ウィンターグリーン、シトラス系、ヤランヤラン

Tufts University Small Animal Hospital(米)

「100%エッセンシャルオイルは犬に危険。ディフューザーは短時間・犬がいない部屋での使用に限るべき」Tufts Now

「犬やペットは人間以上に敏感な嗅覚を持つ。ティーツリー、シナモン、ペニーロイヤルなどは特に避けるべき」


🏠 日本の獣医師・メディアからの注意喚起

獣医師の見解:日本でも香料による影響への懸念が

香水やアロマ、芳香剤による香り成分は、化学物質として犬の嗅細胞を刺激し、化学物質過敏症(香害)につながる可能性があると指摘。「香りに慣れたから安心」という考えは誤解で、濃度や使用頻度には注意が必要です。また、猫で「ケトン」という成分を多く含むオイルは避けるべきとされています。


日本のコラムから:犬でも避けるべき精油や香料がある

刺激の強い香料や精油は、敏感な嗅覚を持つ犬にとっては非常に不快であり、特に妊娠中・授乳中・治療中の犬には体調悪化を招く恐れがあると注意されています。

  • クローブ…強い刺激と肝毒性あり

  • オレガノ…皮膚刺激性が強い

  • シトラス系…光毒性があるものもあり、皮膚や体調への影響の可能性がある

「香害」の観点から:獣医師も警鐘を鳴らす


エッセンシャルオイルを使った消臭剤や柔軟剤、ルームフレグランスにはVOC(揮発性有機化合物)が含まれており、犬の呼吸器や皮膚に悪影響をもたらす「香害」のリスクがあるとしています。

香りにはリラックス効果もありますが、ペットの健康を最優先に考える必要があるとまとめています


✅ 保護者ができること


  • 鼻や口が届く場所に置かない。急な体調変化があれば、香製品(芳香剤・柔軟剤・アロマなど)の使用状況を振り返ってみてください。

  • 香りを使いたい場合は、獣医師に相談の上、低濃度・換気環境で使用するなど慎重に対応しましょう。

  • 犬がいる空間でのディフューザーや強い香りの長時間使用は避けましょう。


犬の繊細な嗅覚と健康を守るため、私たち保護者の工夫が大切です。日常にあふれる香りを選ぶとき、犬の世界にも思いを寄せてみてください。


👃 人間への香害

人間も香料による健康被害(香害)に注意が必要です。

主な症状

  • 呼吸器系:咳、鼻づまり、喘息悪化

  • 神経系:頭痛、めまい、倦怠感、集中力低下

  • 皮膚症状:かゆみ、湿疹

  • その他:吐き気、睡眠の質低下


発生しやすい状況

  • 密閉空間での芳香剤・柔軟剤の長時間使用

  • ディフューザーでの精油の長時間使用

  • 香水やルームフレグランスの重ね付け


対策

  • 無香料・低香料の製品を選びましょう。

  • 室内換気をこまめに行いましょう。

  • 香水やフレグランスは控えめに

  • 同居者の体調変化に注意しましょう。

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