🌧 雨のち雪の予報の日に起きたこと
- かとうようこ

- 2025年12月26日
- 読了時間: 4分
― オリーブの木の下で、命の循環を思う ―

🐣 小さなヒナの声
雨のち雪という天気予報が出ていた日。
庭のレイズドベッドにビニールを貼ろうと、支柱を立てに外へ出ました。
そのとき、オリーブの木の上から、
生まれて間もないような小さなヒナの声が聞こえてきました。
先週、枝を剪定しようとしたときに見つけた、あの巣。
鳥は一度逃げましたが、すぐに戻ってきました。
その様子を見て、
もう卵があるのだろう、ヒナが生まれて巣立つまで、このままにしておこう
——そう決めたのでした。
親鳥が餌をあげている気配があり、すぐに飛び立っていきました。
種類まではわかりませんでしたが、中型の鳥のようです。
思わず、ほっこりした気持ちになって家の中へ入り、
テレワーク中の夫に話しました。
「卵がかえったみたい。ヒナの声が聞こえたよ」
夫も嬉しそうに、
「子育ての邪魔にならないように、なるべく見ないようにしていたんだけど、生まれたんだね」
そう言って、窓からそっとオリーブの木を眺めていました。
⚡突然の出来事
午後になり、昼食を済ませてから、夕食用に小松菜を採りに行こうと外へ出ました。
その瞬間です。
オリーブの木から、突然カラスが飛び出してきました。
足に、何かをつかんでいます。
ぎょっとして後を追うと、カラスは焦ったのか、車道に何かを落としました。
車を避けて駆け寄ると、それは——あの巣にいた親鳥のようでした。
すぐに抱き上げると、今まさに絶命したばかりで、
体はまだ温かく、胸のあたりに深い傷がありました。
胸が詰まり、急いで家に戻って夫を呼びました。
「親鳥がカラスにやられた。巣にヒナがいないか確認して。もし生きていたら、助けないと!」
夫は脚立を出して、巣の中を確認してくれました。
けれど、中は空っぽでした。
おそらく、親鳥より先に、ヒナは食べられてしまったのでしょう。
🌿自然界の中で
親鳥を落としたカラスは、また戻ってきて、
近くの電線からこちらに向かって鳴いていました。
カラスにしてみれば、獲物を横取りしたのは私です。
ヒナはもういない。
もしかしたら、親鳥はヒナを守るために、逃げずに戦ったのかもしれない
——そんな思いが浮かびました。
手の中にある、まだ温かい親鳥。
この命を、葬るべきなのか、それとも自然に還すべきなのか。
夫に聞くと、
「そのままにしておいた方がいいんじゃないかな」
と静かに答えました。
そうだよね。この親鳥が子育てをしていたのなら、
あのカラスも、もしかしたら子育て中なのかもしれない。
助けられなかったことは、悲しい。
けれど、自然界のルールの中で、私たちにもうできることはないのかもしれない。
🔄命をつなぐということ
この親鳥は、葬るのではなく、
そのまま次の命につながれていくことに委ねる
——そうすることが、自然の流れなのではないかと思いました。
オリーブの木の下に、そっと親鳥を置き、手を合わせました。
「自然界は、厳しいね……」
そう話しながら、夫と家の中に戻りました。
小さな命が生まれ、そして消えていく。
そのすべてが、私たちのすぐそばで、静かに繰り返されている。
悲しみと同時に、命の尊さと循環を、深く胸に刻んだ一日でした。
🌙 追記 〜 夕暮れのオリーブの木の下で 〜
夕方、日が暮れてから、もう一度外に出てみました。
オリーブの木の下には、まだ親鳥の亡骸が、そのまま横たわっていました。
空からは、ちらちらと雪が舞い始めていました。
あのカラスは、あれから戻ってきていないようでした。
きっと、もう来なかったのだと思います。
このまま冷たい雪に埋もれていくのなら
——そう思ったとき、やはり、このままにはしておけない気持ちになりました。
土を掘り、親鳥をそっと埋葬しました。
どうか、ヒナの魂と共に、虹の橋を渡れますように。
来世では、安心して子育てができ、幸せでありますように。
そう祈りながら、静かに手を合わせました。
雪は音もなく降り、
すべてがまた、自然へと還っていくように感じられました。


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