🐻クマが人里に降りてくる理由と、私たちができること
- かとうようこ

- 10月18日
- 読了時間: 5分
更新日:10月18日

🐻🌿駆除ではなく、共に生きるためにできること
今年は、全国でクマの出没や被害のニュースが相次いでいます。
住宅地やスーパーの駐車場など、人の生活圏にまで現れるケースも珍しくなくなりました。
なぜ、クマが人里に降りてくるのでしょうか?
そして、もし遭遇してしまったら、私たちはどう行動すればいいのでしょうか。
🌲 クマが人里に降りてくる理由
主な原因は、「食料不足」と「生息地の変化」にあります。
どんぐりや木の実の不作
秋はクマが冬眠前に栄養を蓄える大切な時期。
今年は気候変動による実りの不作が多く、山に食べ物が少ない地域が目立っています。
森林伐採と人里の拡大
開発や林業によって、クマの生活圏が人の生活圏と重なりやすくなりました。
結果として、クマが“迷い込む”ような形で出没するケースも増えています。
温暖化による冬眠リズムの乱れ
冬でも暖かい日が増え、クマが冬眠しきれず動き回ることもあります。
つまり、クマが山から出てくるのは「人を襲いたいから」ではなく、
「生きるため」なのです。
🧭 クマの生態を知る
主食は植物(約8〜9割)で、ドングリ・木の実・山菜・昆虫などを食べています。
肉食のイメージが強いですが、人を襲うのは「防衛反応」がほとんど。
聴覚と嗅覚が非常に優れており、人間の存在に敏感です。
そのため、山歩きでは「鈴・ラジオ・会話」などで、
人の存在を知らせることが一番の安全策になります。
⚠️ もしクマに遭遇してしまったら
遭遇したときの行動で、生死を分けることがあります。
大切なのは「驚かせない」「刺激しない」ことです。
状況 | 対応のポイント |
遠くに見えたとき | クマに気づかれていなければ、静かに後ずさり。鈴や声で人の存在を知らせる。 |
近くで鉢合わせしたとき | 背中を向けず、静かに話しかけながらゆっくり後退。走って逃げない。 |
攻撃された場合 | 頭と顔を守り、うつ伏せに。リュックなどを盾にして防御を。 |
撃退スプレーがある場合 | クマの顔(目・鼻)を狙って噴射。ただし、数メートル以内でのみ有効。 |
また、子グマを見かけても近づかないこと。
母グマが近くにいて非常に危険です。
🔊 防犯ブザーは有効?
音で「人の存在を知らせる」点では有効ですが、
突然大きな音を鳴らすとクマを驚かせて攻撃を誘発することもあります。
遭遇直後では使わず、山歩きの前や道中で鳴らす予防的な使用が安全です。
🧴 クマ撃退スプレーとは?
「ベアスプレー」とも呼ばれ、唐辛子成分(カプサイシン)を含む強力なスプレーです。
海外では登山やキャンプの必需品として広く使われています。
効果範囲:約5〜8メートル
目的:クマを傷つけず、鼻や目を刺激して退散させる
使用時の注意:
・必ず風上から噴射(自分にかからないように)
・クマが数メートルまで近づいたときのみ使用
・日常的な携帯よりも、山歩きやキャンプなどの野外活動時に推奨
日本では「ヒグマ対応」など種類が限られますが、
最近ではホームセンターや登山用品店でも取り扱いが増えています。

🐕 ベアドッグという存在 ― クマと人の“あいだ”を守る
近年、日本でも導入が進んでいるのが、
「ベアドッグ(Bear Dog)」=クマ対策犬です。
ベアドッグは、クマを傷つけずに山へ帰らせるために訓練された犬。
クマの匂いを察知して吠えたり、追い払ったりすることで、
人とクマが直接遭遇するのを防ぎます。
役割 | 内容 |
① クマの追い払い | 吠え声と存在感でクマを威嚇し、森へ帰らせる。銃や罠を使わない安全な方法。 |
② クマの位置の特定 | 匂いを察知して居場所を知らせ、調査やモニタリングに活用される。 |
③ 人とクマの“橋渡し” | 出没前にクマを感知し、事故を防ぐための早期警告を行う。 |
とくにフィンランド原産の「カレリアン・ベアドッグ」は勇敢で冷静、
アメリカでは国立公園でも活躍しています。
日本でも、知床や岩手県などで導入が進み、
“撃たない共存”の象徴として注目を集めています。
クマを駆除するのではなく、クマが安心して山で暮らせるように導く。その最前線にいるのが、ベアドッグたちなのです。
日本でも、ベアドッグを活用した活動が行われています。
軽井沢の自然保護団体、特定非営利活動法人ピッキオさんや
北海道の非営利団体羆塾(ひぐまじゅく)さんでは、
ベアドッグを活用したヒグマ対策や調査、自然保護活動を行っています。
また、日本保存犬協会では、熊被害の防止策として日本犬の活用も提案しています。
我が国固有の日本犬は、かつて狩猟犬として熊や猪、鹿などの鳥獣から人々を守ってきました。近年の猟能研究会では、犬と飼い主の信頼関係を通じて、本能的に熊や猪に立ち向かう姿が確認されています。こうした日本犬の能力も、ベアドッグ的役割として活かすことで、熊被害を最小限に抑えることが期待されています。
水源の森である奥山の保全・再生、そして大型野生動物と共存できる社会を目指して活動を続けている実践自然保護団体 日本熊森協会
自然の中でクマと共生する未来をつくるために、興味のある方は公式サイトをご覧になり、支援の方法を確認してみてください。
🕊️ 共に生きるために
クマは「山の生態系の守り手」です。
彼らが生きる環境を守ることは、私たち人間の未来を守ることにもつながります。
ごみを外に放置しない
山菜採りやハイキングでは音で存在を知らせる
クマを見かけたら、自治体や専門機関に連絡する
“恐れる”だけではなく、
“理解し、距離を保ちながら共に生きる”という視点が、
これからの時代に求められています。
🐾 命を守る知恵を持ち、恐怖ではなく理解を。
それが、クマと人が共に暮らすための第一歩です。
次回の記事では、クマの生態や自然界で果たす重要な役割に迫ります。
彼らが森の中でどのように生き、
環境とどのように関わっているのかを詳しく見ていきます。



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