🌿 霊長類学者ジェーン・グドールさんに追悼の想いを込めて
- かとうようこ
- 10月3日
- 読了時間: 4分

英国出身の霊長類学者であり、環境保護活動家として世界に多大な影響を与えた ジェーン・グドールさん が逝去されました。
享年91歳。長年にわたりチンパンジー研究や自然保護活動に人生を捧げた彼女の功績に、心から敬意を表するとともに、ご冥福をお祈りいたします。

🌍 彼女が残した功績
チンパンジー研究の先駆者
1960年、タンザニア・ゴンベ国立公園で野生チンパンジーの観察を始め、チンパンジーが「道具を使う」ことを発見しました。これは、人間だけが道具を使うという常識を覆した歴史的発見です。
動物観の転換
チンパンジー一頭一頭に名前を付け、個性や感情を大切に観察する姿勢を広めました。動物も人間と同じように感情や社会性を持つ存在であることを、科学と優しさの両面から伝え続けました。
環境保護と教育
ジェーン・グドール研究所を設立し、森林保全や地域社会と協働した保護活動を展開。さらに「ルーツ&シューツ」という教育プログラムを通じ、未来を担う子どもたちに自然と共生する大切さを伝えました。
🔬 研究者としての姿勢
ジェーン・グドールさんの研究は、従来の「客観性一辺倒」の科学とは異なる新しい姿勢を示しました。
固定観念にとらわれない観察
チンパンジーに番号ではなく名前をつけ、個性や家族関係に注目したことで「科学的ではない」と批判を受けながらも、後にその視点は広く認められるようになりました。
粘り強い観察
彼女は何時間も木陰に座って待ち続け、やがてチンパンジーがシロアリを捕食する際に「枝を道具として使う」姿を発見しました。粘り強さと忍耐が大発見につながった瞬間でした。
共感を重視する科学
データだけでなく、チンパンジーの「喜び」や「悲しみ」に耳を傾け、心でつながる観察を実践しました。これが保護活動や教育活動にも生かされています。
😊 ほほえましいエピソード
バナナで築いた信頼関係
初期にはなかなか近づいてくれなかったチンパンジーたちに、少しずつバナナを置くことで安心してもらい、観察が進んだといいます。
母子への深いまなざし
母親が子に毛づくろいをする姿を見て「人間の母親と同じ優しさを感じる」と語ったことがあり、彼女の温かな視点を物語っています。
ユーモアあふれる一面
講演会では「人間よりチンパンジーのほうがずっと分かりやすいこともあるんです」と笑いを交え、会場を和ませることもありました。

📚 著書『希望の教室』について
ジェーン・グドール博士は、生涯を通じて、希望と行動の大切さを伝える書籍も残しています。
『希望の教室』(The Book of Hope)
著者:ジェーン・グドール、ダグラス・エイブラムス
翻訳:岩田佳代子
出版社:海と月社(2022年)
本書は、ジェーン・グドール博士がこれまでの経験と知見をもとに、私たちが直面する環境問題や社会課題に対して「希望」を見出す方法を探る対話形式の書籍です。ダグラス・エイブラムスとの対話を通じて、希望とは何か、どのように育むことができるのかについて深く掘り下げています。
特に、気候変動や生物多様性の喪失、社会的不平等などの現代の課題に対して、絶望するのではなく、行動を起こすことで希望を見出す重要性が強調されています。
ジェーン・グドール博士は、個人の力が集まることで大きな変化を生み出す可能性を信じており、そのメッセージは多くの読者に勇気とインスピレーションを与えています。
ダグラス・エイブラムス
アメリカ出身の作家・編集者で、人生哲学や希望に関する書籍を手掛けています。『希望の教室』では、博士の考えや経験を対話形式でまとめ、読者にわかりやすく伝える役割を担いました。
🗣️ 私たちへのメッセージ
グドールさんは、生涯を通してこう語っていました。
「あなたの毎日の選択が未来をつくります。何を食べるか、何を買うか、どのように生きるか。その小さな行動の積み重ねが、世界を変えるのです。」
また、絶望ではなく希望を持つことの大切さも伝えています。
「人間が地球に与えてきたダメージを考えると、希望を持つのは難しいかもしれません。けれど私は若い人たちの情熱、自然の回復力、人間の創造性を信じています。」
🌱 いま私たちにできること
ジェーン・グドールさんが生涯をかけて教えてくれたのは、自然も動物も人間も「ひとつながりの命」であるということ。私たち一人ひとりの小さな選択や行動が、未来の地球を形づくっていきます。
今日からできることは大きくなくても大丈夫です。食事を選ぶとき、買い物をするとき、自然の中を歩くとき——「つながり」を思い出すことが、彼女の想いを受け継ぐ第一歩になるのだと思います。
🌿 ジェーン・グドールさん、あなたが遺してくださった愛と知恵を胸に、私たちはこれからも自然と共に歩んでいきます。
心からの感謝とともに、ご冥福をお祈りいたします。
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